胚凍結
胚凍結とはー体外受精で重要な「受精卵の保存技術」
胚凍結とは?
体外受精(IVF)を進めるうえで欠かせない技術が「胚凍結(はいとうけつ)」です。
胚凍結は、採卵後にできた受精卵(胚)を凍結保存し、患者様の身体や子宮内膜の状態が整った最適なタイミングで移植(凍結胚移植)を行うための方法です。
胚は2段階で凍結されることが多く、初期胚(分割期胚)、胚盤胞(着床直前の段階)のどちらかに成長した時点で凍結します。
特殊な凍結保護液を用いて-196℃の液体窒素で凍結保存された胚は、生物学的な時間が止まった状態に入り、数年後でも質がほとんど変わりません。
胚凍結が必要とされる理由
胚凍結は、以下のような医学的・生活的要因から非常に大きな役割を持ちます。
- 子宮内膜の状態が移植に適していない場合に周期を調整できる
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の回避
- 複数個の胚を効率的に管理し、妊娠のチャンスを増やす
- 病気の治療前に将来の妊娠のために胚を保存する(がん治療前など)
特に現代では、あえて新鮮胚移植を行わず、全胚凍結(Freezeall)を行うケースが増えています。
これは、ホルモン環境が安定した別周期で移植したほうが妊娠率が高いというデータが増えているためです。
胚凍結のメリットとデメリット
胚凍結の大きな魅力は「子宮内膜が整った最適なタイミングで移植できる」点です。
治療のメリット・デメリットを理解し、整理していきましょう。
メリット
①子宮内膜の状態を整えて移植できる
凍結胚移植では、ホルモン補充周期や自然周期を用い、子宮内膜が着床しやすいタイミングを選べます。
これは妊娠率に非常に大きく影響します。
②身体への負担が軽い
採卵と移植を別周期にすることで、排卵誘発で乱れたホルモン環境を立て直す時間があり、心身への負担を抑えられます。
③OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の悪化を避けられる
高刺激により卵巣が腫れている場合、新鮮胚移植を行うとOHSS(卵巣過剰刺激症候群)が悪化する可能性があります。
胚を凍結し移植を後日に回すことで、安全に治療を継続することができます。
④複数胚を計画的に使える
複数の胚を凍結しておけば、採卵の回数を減らすことができ、経済的にも身体的にも大きなメリットがあります。
⑤移植スケジュールを立てやすい
凍結胚移植は移植日を調整しやすく、仕事や家庭の予定との両立がしやすい点も大きなメリットです
デメリット
①融解時に胚がダメージを受ける可能性
ガラス化凍結法により生存率は高くなっていますが、融解後に一部の胚が変性する可能性はゼロではありません。
②保存費用がかかる
1年ごとに更新費用が必要なクリニックが多いため、長期保存の場合はコストが増えます。
③妊娠率には個人差がある
凍結胚移植の妊娠率は高い傾向にありますが、年齢、採卵数、胚の質によって結果は異なります。
④災害などで胚を失うリスクはゼロではない
液体窒素タンクの温度が上昇すると胚が損傷するため、万が一の火災・地震で受精卵が失われる可能性があります。
(多くの施設は安全対策を徹底しています。)
胚凍結の流れ(凍結から融解・移植まで)
胚凍結は以下のステップで進みます。
採卵・受精
排卵誘発後に採卵し、顕微授精(ICSI)または媒精によって受精させます。
胚の培養(初期胚〜胚盤胞)
胚は以下の段階を経て成長します。
受精卵(2PN)→初期胚(2〜8細胞)→胚盤胞(5日目〜6日目)
胚凍結は、初期胚、または胚盤胞で行われることが多いですが、胚盤胞期で凍結を行うことが多くなっています。
どの段階で凍結するかはクリニックの方針や胚の状態、患者様の状況によって異なります。
ガラス化凍結(vitrification)で保存
高速で凍結することで氷の結晶を作らず、胚のダメージを最小限に抑える方法です。
現在の主流で、融解後の生存率は非常に高い水準にあります。
胚の保存
胚は液体窒素タンク内(−196℃)で、長期間にわたり品質を保ったまま保存されます。
融解(解凍)
移植の周期が決まったら、胚を融解します。
この際、胚の伸展率や形態を再評価し、移植に使えるかを確認します。
凍結融解胚移植
融解胚移植には「自然周期」と「ホルモン補充周期(HRT周期)」の2つがあり、患者様の状態に合わせて選択されます。
- 自然周期
女性自身の排卵リズムに合わせて移植を行う方法で、薬の使用が最小限で身体的負担が少ないのが特徴です。
自然に排卵が起こる方に適していますが、排卵日を正確に合わせるため通院回数が増えることがあります。
- ホルモン補充周期
エストロゲンとプロゲステロンを投与して人工的に子宮内膜を整える方法です。
排卵の有無に左右されず、移植日の計画が立てやすいというメリットがあります。
月経不順の方や排卵が安定しない方に適していますが、薬の内服・膣剤使用が必要になります。
どちらも妊娠率に大きな差はなく、患者様の体質や生活リズムに合わせて最適な方法が選ばれます。
胚凍結の保存期間・費用・注意点
保存期間の目安
法律上の明確な制限はありませんが、多くの施設では1〜5年間の単位で管理します。
1年ごとに更新が必要で、更新しない場合は胚を廃棄処分とするクリニックが多いです。
また、女性の生殖年齢を超えないこと(一般的に45歳頃まで)を最長の保存期間としているクリニックもあるので、確認が必要です。
費用の目安
クリニックによって異なりますが、一般的には以下のような範囲です。
胚凍結費用:5〜15万円/回
保存費用:1〜3万円/年
複数胚がある場合、追加費用がかかる場合もあります。
詳しくは当院にご連絡ください。
胚凍結の注意点
- 保存期間が長い場合は更新を忘れない
- 融解後に必ずしも全胚が生存するわけではない
- 妊娠率は母体年齢に依存する
また、胚の凍結・融解には高度な技術が必要であり、経験豊富な胚培養士がいる施設を選ぶことも重要です。
当院では、胚の凍結技術・培養環境・移植周期の調整など、すべての段階で患者様の妊娠率を最大化できるよう、専門的なサポートを行っています。
胚凍結や凍結胚移植について不安な点やご相談があれば、どうぞお気軽にお問合せください。
