otemachi-art-clinic
icon

高度生殖医療(ART)

1. 高度生殖医療(ART)とは

高度生殖医療の定義

度生殖医療(ART:Assisted Reproductive Technology)とは、卵子や精子、受精卵を体外で扱う医療技術の総称です。
自然な受精や着床が難しいカップルに対して、医学的な介入によって妊娠の可能性を高めることを目的としています。

ARTに含まれる主な治療法は、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、採卵術、胚培養、胚移植、胚凍結などです。
これらの技術を組み合わせて、一人ひとりの状態に合わせた治療を進めていきます。

1978年にイギリスで世界初の体外受精児が誕生して以来、技術は飛躍的に進歩し、日本でも年間約50万件以上の治療が行われています。
2022年には年間出生児のうち約15人に1人がARTによって生まれており、今や不妊治療の中心的な役割を担っています。

高度生殖医療が適応となる場合

高度生殖医療が必要となるのは、主に以下のようなケースです。

卵管に問題がある場合
卵管閉塞や癒着、卵管切除などによって、精子と卵子が自然に出会えない状態です。
卵管の機能が正常でなければ受精ができないため、体外受精が選択されます。

男性側に問題がある場合
精子の数が極端に少ない、運動率が低い、形態が異常であるなど、精子の質に課題があると、通常の性交渉や人工授精では妊娠が難しくなります。
このような場合、顕微授精を併用することで妊娠の可能性を高めます。

女性の年齢が35歳以上の場合
加齢によって卵子の質や数が低下し、自然妊娠が難しくなることがあります。
体外受精では、複数の卵子を採取して受精させることで、妊娠のチャンスを広げることができます。

一般不妊治療で効果が得られない場合
タイミング法や人工授精を半年以上続けても妊娠に至らない場合や、原因不明の不妊の場合にも、高度生殖医療が検討されます。

そのほか、卵巣機能不全やホルモン異常がある場合、遺伝的な問題のリスクがある場合、がん治療前に卵子や精子を凍結保存したい場合など、さまざまな状況で高度生殖医療が役立ちます。

高度生殖医療の歴史と進歩

1978年、イギリスでルイーズ・ブラウンさんという世界初の体外受精児が誕生しました。
その5年後の1983年には日本でも体外受精による出産が成功し、不妊治療の分野に大きな転機が訪れました。

1992年にはベルギーで顕微授精が成功し、重度の男性不妊にも希望が生まれました。
日本でも1990年代半ばに導入され、現在では体外受精全体の約半数以上が顕微授精によって行われています。

近年では、胚培養技術の進歩により胚盤胞まで培養する方法が一般化し、着床率が向上しました。
また、胚凍結技術の発展によって、身体への負担を抑えながら妊娠率を高めることが可能になっています。

2022年4月からは体外受精などの生殖補助医療に公的医療保険が適用されたことも、治療件数増加の大きな要因となっています。

2. 体外受精(IVF)の全体の流れ

高度生殖医療の中でも中心的な治療である体外受精は、大きく分けて6つのステップで進んでいきます。

ステップ1. 卵巣刺激(排卵誘発)

自然周期では1個しか排卵されない卵子を、排卵誘発剤を使って複数個育てます。
超音波検査と血液検査で卵胞の発育状況を細かくチェックしながら、卵胞が18mm以上に成長したら、排卵誘発剤を投与して排卵の準備を整えます。

排卵誘発の方法には、低刺激、中刺激、高刺激などがあり、年齢や卵巣機能、これまでの治療歴などをもとに、一人ひとりに合った方法が選ばれます。

ステップ2. 採卵と採精

排卵誘発剤使用の約36時間後に採卵を行います。経膣超音波で卵巣を確認しながら、細い針で卵胞を刺して卵子を採取します。
所要時間は10から20分ほどで、麻酔を使うため痛みは少ないか、ほとんど感じません。

採卵当日には、パートナーが自宅で採取した精液を持参します。
精子の数や運動率が極端に悪い場合は、顕微授精を行うこともあります。

採卵後は1から2時間ほど安静にし、体調を確認してから帰宅します。
麻酔の影響が残るため、当日の車の運転は避けるようにしましょう。

ステップ3. 受精(媒精)

培養液内で卵子と精子を出会わせて受精させます。受精方法には2種類あります。

体外受精(IVF)
卵子に多数の精子をふりかけて自然に受精させる方法で、精子の状態が良好な場合に選ばれます。
顕微授精(ICSI)
1個の精子を卵子の中に直接注入する方法で、精子の運動性や数が極端に低い場合や、前回受精しなかった場合に用いられます。

ステップ4. 胚培養

受精卵を、専用の培養器で育て、細胞分裂を進行させます。
受精後は、2細胞期、4細胞期、8細胞期へと分裂していき、5から6日目には胚盤胞と呼ばれる成熟段階に達します。

体内と同じような環境を再現し、24時間体制で厳密に管理された培養室で育てられます。
培養の経過によっては、受精卵の発育が停止する場合もあり、その場合は移植できないこともあります。

ステップ5. 胚移植

カテーテルを使用し、子宮内に受精卵(胚)を移植します。
麻酔は不要で、痛みもほとんどありません。数分で終了する処置です。

胚移植には2種類あります。

新鮮胚移植
採卵した同じ周期で培養した胚をそのまま子宮に戻す方法です。
治療期間が比較的短いですが、排卵誘発によるホルモン変化で子宮内膜が十分な状態にならないこともあります。

凍結胚移植
胚を一度凍結保存し、後の周期で子宮の状態を整えてから融解して移植する方法です。
現在は、子宮内膜を最も良い状態に整えて移植できる凍結胚移植が主流となっています。

ステップ6. ホルモン補充と妊娠判定

胚移植後は、黄体ホルモン(プロゲステロン)などを膣座薬や注射、内服薬などで補充し、子宮内膜を着床に適した状態にしたり、妊娠の継続を促します。

胚移植から10から14日後に血液検査で妊娠の有無を確認します。
この間は、落ち着いた生活を心がけ、体を冷やさず、睡眠を十分にとり、激しい運動や強いストレスを避けることが大切です。

3. 高度生殖医療を構成する各治療について

前章でご紹介した体外受精の流れは、実際には複数の専門的な治療を組み合わせることで成り立っています。
ここでは、その各治療の概要をご紹介します。
詳しい内容は、それぞれのページをご覧ください。

体外受精(IVF)

体外受精とは、女性の体外で卵子と精子を受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻すことで妊娠を目指す生殖補助医療です。
卵管障害、男性側の問題、高年齢、一般不妊治療が効果を示さない場合などに適応となります。

1978年に世界初の体外受精児が誕生して以来、技術は飛躍的に進歩し、日本では年間約50万件以上の治療が実施されています。
2022年4月から保険適用が開始されたことで、より多くの方が治療を受けられるようになりました。
体外受精は希望をつなぐ手段である一方で、精神的・肉体的・経済的な負担が伴うことを理解することが大切です。

顕微授精(ICSI)

顕微授精とは、顕微鏡下で精子を卵子に直接注入する受精方法です。
精子の数が極端に少ない、運動率が低い、通常の体外受精で受精しなかった場合などに選ばれます。

1992年にベルギーで世界初の顕微授精児が誕生し、重度の男性不妊に大きな希望をもたらしました。
日本でも1990年代半ばに導入され、現在では体外受精全体の約半数以上が顕微授精によって行われています。
顕微授精は「受精の成功率を上げる治療」であり、卵子の質や子宮環境など、女性側の要因にも留意する必要があります。
成功率は年齢によって大きく異なり、30代前半では約40パーセント程度ですが、年齢が上がるにつれて低下します。

採卵術

採卵術とは、経膣超音波ガイド下に細い針を用いて、卵巣内の卵胞から卵子を吸引・回収する医療行為です。
体外受精の第一歩であり、受精の成否を大きく左右する重要な処置です。

排卵誘発剤を使って複数の卵胞を育て、排卵のタイミングを医師がコントロールして行います。
採取された卵子はただちに培養室へ運ばれ、顕微授精または通常の体外受精に使用されます。

採卵で得られる卵子の数は個人差が大きく、年齢や卵巣機能、刺激法などによって異なります。
一般的には3から15個程度が目安ですが、重要なのは数よりも質の良い成熟卵を得ることです。
採卵は安全性の高い処置ですが、まれに卵巣過剰刺激症候群、出血や感染、麻酔の副作用が起こることがあります。

胚培養

胚培養とは、体外で受精した卵子(受精卵)を、母体の子宮に戻すまでの間、最適な環境で育てる工程のことです。
人の体内環境を再現する培養機器の中で、温度・ガス濃度・pHなどを細かく管理しながら、胚の成長を見守ります。

受精後は、2細胞期、4細胞期、8細胞期へと分裂していき、受精から5から6日目には胚盤胞と呼ばれる成熟段階に達します。
この数日間の培養期間は、まさに”命のはじまりを支える準備期間”です。

胚培養では、体内と同じような環境を再現します。
最新の培養器では、1つひとつの胚を個別のチャンバーで管理し、安定した環境で培養できるようになっています。
胚は形態などによって「グレード」に分類され、グレードが高ければ着床・妊娠率が高くなります

胚移植

胚移植とは、体外受精によって体外で受精・培養された胚(受精卵)を子宮内に戻す治療です。
体外受精の成功を大きく左右する重要なプロセスであり、移植する胚の状態、子宮内膜の厚さや質、移植のタイミングなど多くの要素が妊娠率を決めます。

胚移植には「新鮮胚移植」「凍結胚移植」の2つがあります。
新鮮胚移植は採卵した同じ周期で胚をそのまま移植する方法で、凍結胚移植は胚を凍結し、別の周期で子宮環境が整ったタイミングで移植する方法です。
現在は、子宮内膜を最も良い状態に整えて移植でき、身体的負担が軽い凍結胚移植が主流となっています。
移植のタイミングを調整する方法には、自然排卵周期、低刺激周期、ホルモン補充周期の3つがあり、患者様の状態に合わせて最適な方法を選びます。

胚凍結

胚凍結とは、採卵後にできた受精卵(胚)を凍結保存し、患者様の身体や子宮内膜の状態が整った最適なタイミングで移植を行うための方法です。
特殊な凍結保護液を用いてマイナス196℃の液体窒素で凍結保存された胚は、生物学的な時間が止まった状態に入り、数年後でも質がほとんど変わりません。
胚凍結の大きなメリットは、子宮内膜が着床しやすいタイミングを選べること、採卵と移植を別周期にすることで身体への負担を抑えられること、卵巣過剰刺激症候群の悪化を避けられること、複数胚を計画的に使えることなどです。

現在では、あえて新鮮胚移植を行わず、全胚凍結を行うケースが増えています。
これは、ホルモン環境が安定した別周期で移植したほうが妊娠率が高いというデータが増えているためです。

4. 高度生殖医療の費用と助成制度

保険適用について

2022年4月から、体外受精などの生殖補助医療に公的医療保険が適用されるようになりました。
これにより、治療費の自己負担が大幅に軽減されています。

保険適用の主な条件は、
治療開始時の妻の年齢が43歳未満であること
40歳未満は1子ごとに最大6回まで、40から43歳未満は最大3回までであること
婚姻または事実婚関係にあること
医師が体外受精を医学的に必要と判断した場合などです。

保険診療では3割負担となりますが、具体的な費用は検査内容や治療内容によって異なります。
また、薬剤費、凍結保存料、検査費などが別途かかる場合もあるため、各クリニックで確認することをお勧めします。

自治体の助成制度

国の制度に加え、各自治体が助成または先進医療併用助成を設けています。

例えば、東京都では「東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業」という制度があります。
これは、保険適用された特定不妊治療と併せて実施した「先進医療」にかかる費用のうち、自己負担分の一部を助成する制度です。

市区町村においても補助金を制定している場合がありますので、治療開始前に確認しておくのが安心です。

高額療養費制度の活用

高度生殖医療は保険適用とはいえ、自己負担額が高額になることがあります。
そのような場合に利用できるのが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、1か月にかかった医療費が一定額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。
自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。

また、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払い自体を自己負担限度額までに抑えることができます。
限度額適用認定証は、加入している健康保険に申請することで発行してもらえます。

5. 成功率・リスク・治療を検討する際のポイント

成功率について

高度生殖医療の妊娠率は、年齢によって大きく異なります。
30代前半では約40パーセント程度ですが、30代後半には約30パーセント、40代前半は約15から20パーセントと、年齢が上がるにつれて妊娠率の低下が見られます。
これは、卵子の質が年齢とともに低下するためです。
高度生殖医療は「受精の成功率を上げる治療」であり、「妊娠率を上げる治療」ではありません。
卵子の質や子宮環境など、女性側の要因にも留意する必要があります。

また、

主なリスク

高度生殖医療には、いくつかのリスクが伴います。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤に対して卵巣が過剰反応し、腫れや腹水がたまる状態のことです。

軽度であれば腹部の張りや軽い痛みで済みますが、重症化すると呼吸困難や血栓症を伴うこともあります。
医師はホルモン値を細かくチェックし、必要に応じて凍結全胚移植でリスクを回避します。

多胎妊娠
複数の胚を移植した場合に起こることがあり、母体にも胎児にも大きな負担がかかります。

早産、低出生体重児、妊娠高血圧症候群、帝王切開のリスクが上がるため、近年では単一胚移植が主流となっています。

流産について
高度生殖医療での妊娠も、流産率は自然妊娠とほぼ同じです。

主な原因は治療方法ではなく、卵子の染色体異常や加齢による卵子の質の低下です。

採卵に伴うリスクとして、まれに出血や感染、麻酔の副作用が起こることがあります。

医師は採卵前にホルモン値や卵巣の状態を細かくモニタリングし、刺激の強さや採卵タイミングを慎重に調整します。

6. 高度生殖医療を始める前に知っておきたいこと

年齢と卵子の質は密接に関係する

成功率についての説明でも触れましたが、卵子の質は加齢とともに低下し、特に35歳以降は妊娠率が下がります。
早めの受診・相談が妊娠への近道です。
悩みがある場合は、できるだけ早く専門医に相談することをお勧めします。

精子の状態も妊娠率を左右する

不妊の原因は、男性に原因がある場合と、男女双方に原因がある場合を合わせると、男性側にも原因がある割合は約半数になります。
男性側の検査・生活改善も同時に行うことが大切です。
喫煙、ストレス、生活習慣は精子に大きく影響します。

経済的・精神的な負担を理解する

高度生殖医療は1回で結果が出るとは限らず、治療の継続には心身のサポートが欠かせません。
治療のペースや費用について夫婦で無理のない計画を立てましょう。

体外受精には多くの負担や不安が伴うのが現実です。
治療を始めたとしても「本当に妊娠できるのか」「何回挑戦しても結果が出ないかもしれない」といった先の見えない不安を抱える人は少なくありません。

また、採卵やホルモン注射、排卵誘発剤の使用など、身体への負担も無視できません。
これらの処置によって腹痛や倦怠感、ホルモンバランスの乱れが起きる場合もあります。

こうした精神的・肉体的・経済的な負担が重なり、途中で治療を断念するケースも少なくありません。
高度生殖医療は希望をつなぐ手段である一方で、その過程には現実的な困難が伴うことを理解することが大切です。

クリニック選びは慎重に

成功率だけでなく、医師の説明、培養士の技術、培養環境(ラボの設備)も重要です。
納得して治療を進められるクリニックを選ぶことが、成功への第一歩です。

7. 大手町ARTクリニックについて

高度生殖医療は、医療技術・環境・人の手すべてが調和して初めて成功します。
単なる医療技術にとどまらず、人生設計や社会のあり方にも深く関わる分野として、今後も発展が期待されています。

不妊治療の道のりは決して簡単ではありませんが、今や多くのご夫婦がこの技術によって新しい命を授かっています。
当院では、妊娠を望む患者様一人ひとりに寄り添い、安心して治療に臨める環境づくりを大切にしています。

医療的なサポートだけでなく、心理的ケアや生活支援にも力を入れ、患者様が安心して希望を持てるよう努めています。
まずはご相談ください。

 

参考文献

日本産科婦人科学会「生殖医療ガイドライン」
日本生殖医学会「不妊症診療ガイドライン」
厚生労働省「不妊治療の保険適用について」


RESERVATION

診察・予約

診療時間

10:00~14:00
16:00~20:00

診療時間:10:00 - 20:00
◯土曜日 9:00 - 13:00、14:00 - 17:00
休診日:木曜日、日曜日、祝日
住所
100-0004
東京都千代田区大手町1丁目5−1 ファーストスクエア B1
TEL
03-6257-5110
電車でのアクセス
・東京メトロ 丸の内線、千代田線、半蔵門線、東西線 大手町駅C8出口直結
・都営地下鉄 三田線 大手町駅C8出口直結
・JR 東京駅(丸の内北口) 地下直結